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【1】[Ⅰ] 右に行くと食物,左に行くと電気ショックを与えるような図のような字型迷路で,これまで何回か,ネズミを使って繰り返し実験を行った.
こうした実験の結果,次のことがわかった.
第回の実験では,ネズミが右に行くか,左に行くかは同じ確率である.
第回の実験で,ネズミが食物にありつけた後は,第回の実験で右に行く確率は左に行く確率はになる.
第回の実験で,ネズミが電気ショックを受けた後は,第回の実験で右に行く確率は左に行く確率は,になる.
これらの結果をもとにして,ネズミを使った同じ実験を行うことを考えてみよう.から,第回の実験で,ネズミが右に行く確率も左に行く確率も,ともにであるから,第回の実験で,ネズミが右に行く確率はから,
ネズミが左に行く確率は同様にから,
のように計算して求めることができる.
(1) 第回の実験で,ネズミが右に行く確率を求めなさい.
(2) いま,第回の実験で,右に行く確率をとし,左に行く確率をとする.また,第回の実験で,右に行く確率をとし,左に行く確率をとする.このとき,二つのベクトル
の関係を行列の演算の形で表しなさい.
(3) ネズミではなく,サルを対象にして,全く同じ実験を行ったところ,実験の結果のうちについては同じ結果になった.しかしについては,今度は右に行く確率が左に行く確率がであることがわかった.
第回の実験で,サルが右に行く確率を求めなさい.
[Ⅱ] 人間を対象として,次のような二つの代替的な行動の間で行動を何回か選択させる実験を考えよう.
(ⅰ) 行動が選択されれば,確率で報酬が与えられるが,確率で報酬は与えられない.
(ⅱ) 行動が選択されれば,確率で報酬が与えられるが,確率で報酬は与えられない.
ただし,である.
いま人間が,「報酬が得られれば,次回も必ず同じ行動をとるが,報酬が得られなければ,次回は必ず違う行動をとる」という行動原理に基づいて行動を選択しているとしよう.
(4) 第回の実験で,行動をとる確率をとし,行動をとる確率をとする.また,第回の実験で,行動をとる確率をとし,行動をとる確率をとする.このとき,二つのベクトル
の関係を行列の演算の形で表しなさい.
(5) であるとき,ベクトルは定常状態であるといわれる.を求めなさい.
(6) 「確率で行動をとり,確率で行動をとる」という行動原理を考える.このとき,報酬の期待値が最大になるようなを求めなさい.ただし,である.
【2】[Ⅰ] テーブルの上につの皿がのっているとする.これらの皿を,それぞれ皿皿皿と呼ぶことにする.皿には,リンゴが個とみかんが個,皿には,りんごが個とみかんが個,皿にはりんごが個とみかんが個のっているとする.ベクトルで表せば,それぞれの皿はとなる.もちろんここでベクトルの第要素はりんごの個数,第要素はみかんの個数を表す.ここで,以下のつの選択を考える.
選択1:皿あるいは皿のどちらかつを選ぶ.
選択2:皿あるいは皿のどちらかつを選ぶ.
選択3:皿あるいは皿のどちらかつを選ぶ.
さて,氏は選択1では皿を,選択2では皿を,選択3では皿を選んだとする.次に,氏の選択行動を関数の最大化により選択することを考えよう.つまり,氏のりんごとみかんを食べることによる満足度を実数で表し,それの最大化により彼の選択行動を説明することを考える.具体的には,まず氏の満足度を集合から実数への関数で表現する.(このような関数を経済学では効用関数と言う.)たとえば,の満足度をの満足度をの満足度をとおいてみる.つまり,とすることになる.このようにすれば,氏は選択1では皿の満足度(効用関数の値)は皿の満足度はだから満足度の高い皿を選んだと考えることができる.同様に,選択2では皿の満足度は皿の満足度はだから皿を選び,選択3では皿の満足度は皿の満足度はだから皿を選んだと考えることができる.このようにすれば,満足度を表す関数(効用関数)により氏の選択行動を説明できることになる.
(1) 氏は,選択1では皿選択2では皿選択3では皿を選んだとする.氏の選択行動を満足度を表す関数(効用関数)で説明できるか.説明できる場合は満足度を表す関数をつ書け.説明できない場合は,なぜできないか理由を書け.
[Ⅱ] 少し一般的に考えてみよう.つの皿があるとする.これらの皿を,それぞれ,皿ア,皿イ,皿ウと呼ぶことにする.皿アには,リンゴが個とみかんが個,皿イには,リンゴが個とみかんが個,皿ウには,リンゴが個とみかんが個のっているとする.ベクトルで表せば,それぞれとなる.(ただし,これらのベクトルは互いに異なるとする.また,これらのベクトルの要素は以上の整数とする.)今度は,次の選択を考えてみよう.
選択1:皿アあるいは皿イのどちらかつを選ぶ.
選択2:皿イあるいは皿ウのどちらかつを選ぶ.
選択3:皿ウあるいは皿アのどちらかつを選ぶ.
氏が,選択1で皿アすなわちを選んだときは
(ⅰ)
と書き,逆に選択1で皿イすなわちを選んだときは
(ⅱ)
と書くことにする.(ここで,(ⅰ)あるいは(ⅱ)のどちらかつだけ成立する.)同様に氏が,選択2で皿イすなわちを選んだときは
(ⅲ)
と書き,また逆に選択2で皿ウすなわちを選んだときは
(ⅳ)
と書くことにする.(ここで,(ⅲ)あるいは(ⅳ)のどちらかつだけ成立する.)同様に氏が,選択3で皿ウすなわちを選んだときは
(ⅴ)
と書き,また逆に選択3で皿アを選んだときは
(ⅵ)
と書くことにする.(ここで,(ⅴ)あるいは(ⅵ)のどちらかつだけ成立する.)
効用関数を
すべてのについて,
ならば
を満たす関数
と定義する.(ここで,はから実数への関数.)
次に以下を満たす(ここで)が存在するとき,はサイクルを持つという.
(2) この場合,がサイクルを持たないことが,効用関数が存在するための必要十分条件になっていることを証明せよ.
[Ⅲ] 次に,つの皿があるとする.これらの皿を,それぞれ,皿皿皿皿と呼ぶことにする.皿には,りんごが個とみかんが個,皿には,りんごが個とみかんが個,皿には,りんごが個とみかんが個,皿には,りんごが個とみかんが個のっているとする.ベクトルで表せば,それぞれとなる.(ただし,これらのベクトルは互いに異なるとする.また,これらのベクトルの要素は以上の整数とする.)今度は,次の選択を考えてみよう.
選択1:皿皿皿のうち,どれかつを選ぶ.
選択2:皿皿皿のうち,どれかつを選ぶ.
選択3:皿皿のうち,どれかつを選ぶ.
ここで,
と定義する.
今度は,を以下のように定義しよう.氏が,選択1で皿すなわちを選んだとき
すべての(ただし,)について
と書くことにする.たとえば,選択1で皿すなわちを選んだときは,
かつ
と書くことになる.同様に,氏が選択2で皿すなわちを選んだとき
すべての(ただし,)について
と書き,また,氏が選択3で皿すなわちを選んだとき
すべての(ただし,)について
と書くことにする.今度は,効用関数を
すべてのについて,
ならば
を満たす関数
と定義する.(ここで,はから実数への関数.)
(3) 効用関数が存在するためのに関する必要十分条件を求め,それがなぜ必要十分条件になっているか説明せよ.
[Ⅳ] 最後に,この問題を別の観点から考えてみよう.氏は,年月日に円持って買い物に出かけたとする.ある店で,りんご個円,みかん個円で売っていたとする.氏は円を使ってりんご個とみかん個を買ったとする(円使いきる必要はないが,余った金は他の物の購入には使えないとする.また,は以上の整数とする.)翌月の日(つまり,年月日),同じ店に行くとりんごは個円,みかんは個円になっていた.氏は,やはり円持っていて,それを使ってりんご個とみかん個を買ったとする.(同様に,円使いきる必要はないが,余った金は他の物の購入には使えないとする.また,は以上の整数とする.)年月日の場合,購入可能であったりんごとみかんの組み合わせは
となる.また年月日の場合,購入可能であったりんごとみかんの組合せは
となる.今度はを以下のように定義しよう.
すべての(ただし,)について
かつ
すべての(ただし,)について
と定義する.
今度は,効用関数を,の集合(ただしは以上の整数)から実数への関数で,以下を満たすものとする.
すべての(ただし,は以上の整数)について,
ならば
を満たす関数.
(の定義域は,以上の整数を要素とするベクトル全体であることに注意.また,は増加関数とは限らないことに注意.つまり,たとえばやであってもよい.)
(4) 効用関数が存在しないの選び方をつあげよ.
(5) が以下の条件を満たすことが,効用関数が存在しないことの必要十分条件になることを証明せよ.
条件:かつかつ