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2007 東京大学 総合科目II試行試験

易□ 並□ 難□

【1】A(A-1)  n 組のデータ (x1 ,y1 ) (xn ,yn ) が与えられているとし,これらのデータには

yk= axk +b (1)

という 1 次の関係が成り立つことが分かっているとする.ただし, a b k に依らない定数とする.ここで,ある k k 2 に対して,それぞれ次の 3 つの状況を考える.

これらの状況には,ある付加条件のもとで成立しうるものと,成立しえないものがある.成立しうるものについては,そのための必要十分条件を以下のリストから選び,理由を説明せよ.また,成立しえないものについては,そのことを証明せよ.

条件 (ア)  a>0 (イ) a=0 (ウ) a< 0 (エ)  b>0 (オ) b=0 (カ) b< 0



 前問の yk が雑音 vk によって汚され,以下の関係式で得られる zk が観測されたとする.

zk= yk+ vk (2)

いま,ある c> 0 に対して, |vk | c k= 1 2 が成立していると仮定し,

(x1 ,z1 )=(1.0 ,0.5) (x 2,z 2)= (-1.0, 2.0)

が観測されたとする.このとき,以下の問いに答えよ.

(A-2)  c=1 とするとき, a b の内,符号が決定できるものを挙げ,その符号を示せ.

(A-3) この 2 つのデータだけから, a b の符号が一意に定まるために必要となる c の条件を求めよ.

(A-4)  a>0 b< 0 という事前知識があったとする.このデータが観測されるために c が満たすべき条件を求めよ.



B ある農産物は毎年秋に収穫され市場に出回る. k 年目( k= 1 2 )に農産物が 1 単位当りの市場価格 pk 円で取引される場合,その年の需要は 10- pk 単位であるとする.ここで, pk 2 pk 10 をみたす実数である.生産者は,農産物の生産に 1 年を費やすため, k 年目の供給量を k- 1 年目に決める.生産者は, k 年目の市場価格を qk 円と予想して,その年の供給を q k-2 単位に決める.ここで,予想価格 qk 2 qk 10 をみたす実数とする.市場価格 pk は,需要と供給を均衡させる実数値,すなわち等式

10-pk =qk -2 (3)

をみたす値,に定められる.また,生産者が k 年目の市場価格を正しく予想した場合の市場価格を s とする.

 以下の 4 つの設問においては,生産者が市場価格を正しく予想できるとは限らないことを前提とする.生産者は, k 年目の市場価格 qk を, qk- 1 p k-1 をもとに,

qk= qk- 1+α (pk -1- qk- 1) (4)

と予想する.ここで, α 0< α1 をみたす実数である.

(B-1)  pk p k-1 が等式 pk =a pk- 1+b の関係にあることを示し, a b α で表せ.

(B-2) 市場価格について不等式

p1< p2> p3< p4> p5<

が成立していたとしよう. α の取りうる範囲を求めよ.

(B-3)  α1 のとき,常に不等式

|p1 -s| >| p2-s |>| p3-s |>

が成立することを証明せよ.

(B-4) 奇数年目の市場価格が常に 4.2 であった,すなわち,

p1= 4.2 p3= 4.2 p5= 4.2

としよう.偶数年の市場価格 p2 p4 p6 を求めよ.



2007年東京大総合科目II試行試験問題【1】の図

図1:熱プロセス

C 図に示すような,単位時間当たり一定量の水がタンクに流入し,タンク内にあるヒータによって暖められた後,温水となって流出していく熱のプロセスを考える.ただし,タンク内の水は十分攪拌されており,タンク内の水温は一様であると仮定する.また,タンクは完全に断熱されており,外部への熱の流出はないものとする.いま,時刻 t におけるタンクに流入する水の温度とタンクから流出する温水の温度をそれぞれ θ in (t) [° C] θ out (t) [° C] とし,タンクおよびタンク内の水を併せた熱容量を C[ J/°C ] とする.また, qh [J /sec] q in (t) [J/ sec] qo ut (t) [J /sec] を,それぞれヒータの単位時間あたりの発熱量,流入する水がもたらす単位時間あたりの熱量,流出する温水が持ち去る単位時間あたりの熱量とする.ただし, qh は時間によらない.また,上記の [ ] 内は,物理量の次元を表す.このとき,以下の問いに答えよ.

(C-1) この熱プロセスの動的な振る舞いを表す微分方程式を求める以下の手順の中で,   のなかを下記のリスト中の単位の組み合わせで埋めよ.

リスト sec J °C

 時刻 t において流出する温水の温度 θ out (t ) と流入する水の温度 θ in (t ) の差 θ (t) =θo ut (t) -θi n (t)

C dθ (t) dt =qh +qi n( t)-q out (t)

と書ける.一方, qin (t) q out (t) はその時刻における対応する温度に比例するので,

θou t( t)-θ in (t)=R (q out (t)- qin (t) )

が成立する.ここで, R は熱抵抗と呼ばれ, (a) の次元を持つ.この 2 つの式を併せると, θ( t) に関する以下の関係式( 1 階の微分方程式と呼ばれる)が得られる.

RC d θ(t )dt +θ (t) =Rq h(5)

ここで, RC (b) の次元を持つ.

(C-2) 初期時刻 t= 0 での温度差を θ (0)= θ0 とする.このとき,

θ(t )=β eδ t+γ

が微分方程式(5)を満たすように定数 β γ δ を定めよ.

(C-3) いま, T 秒ごとに θ (t) を観測し, xk =θ (k T) とおく.このとき, xk x k+1 の関係は,

xk+ 1=a xk +b

の形で書ける. a b を定めよ.

(C-4) 時間が十分経った後の流出温度と流入温度との差

Θ=lim k x k

を求め,なぜそのような値となるかについて説明を与えよ.

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