【1】 つのベクトルを用いて一つの実数を定める方法として内積がある.平面上の任意のベクトルは,次独立であるつのベクトル(両者は零ベクトルでなく,かつ平行ではない)とつの実数を用いて,次式のように表すことができることが知られている.
(1)
つのベクトルの内積が零のとき,つのベクトルは直交するとよばれ,このとき,式(1)の左辺の係数は,となる.
この性質を参考にして,区間で定義された次関数(ただし,は実数)を,つの互いに異なる関数(ここで,およびは実数)とつの実数を用いて,
(2)
と表すことを考えよう.つの次関数も区間で定義されている.
問1 平面上で直交するベクトルの組を基本ベクトルと以外で示せ.
問2 式(1)の性質を参考にして,式(2)の右辺の係数を定めるために,ベクトルの内積に相当する演算を,関数に対して考えよう.
区間で定義されたつの関数を用いて一つの実数を定める演算を考える.ただし,演算は,ベクトルの内積が持つ以下に示す(a)〜(d)のつの性質を満足する必要がある.
(a) が成り立つ.
(b) 区間で定義された(ただし,は実数)に対して
が成り立つ.
(c) を任意の実数として,
が成り立つ.
(d) が成立し,かつ,等号はで常にのときにかぎる.
いま,区間内の相異なる点をとし,これらを用いて,次式のように,ベクトルの内積に相当する演算を定義する.
(3)
このとき,前述の(a)〜(d)の性質を満たすことを示せ.
問3 として,式(3)の内積に相当する演算により求めた実数が零となり,かつ,傾きが零でないつの次関数の例を一組示せ.
問4 上記の問3で示した一組の次関数と,以下の関数
(4)
について,つの実数を
により求めよ.このとき,式(2)が成立していることを確認せよ.ただし,式(3)を用いる際には,とせよ.
さらに,考える関数を次関数に拡張することを考えよう.以下では,およびをおよびとする(ただし,これらの次関数は区間で定義されており,係数およびは実数である).
問5 考えるつの次関数に対して,問2の式(3)で定義した内積に相当する演算は,前述の(a)〜(d)のつの性質のうちでつを満たすこと,かつ,残りの一つは満たさないことを示せ.
問6 上記の問5で考えた次関数に対して,前述の(a)〜(d)の性質をすべて満足させるためには,問2で示した内積に相当する演算の定義
『区間内の相異なる点をとし,これらを用いて,次式のように,ベクトルの内積に相当する演算を定義する.
』
をどのように修正したらよいかを示せ.その際,前述の(a)〜(d)の中で問5では満たされなかった性質が,この修正により満たされることを明らかにすること.