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【1】 多くのデータを扱うことは,さまざまな分野で必要になる.大量のデータを整理する際に,ある基準によってデータの間に序列をつけることが有用である.また,データを転送するときには,ノイズによる転送の誤りの確率を小さくするような工夫が必要である.
A 種類の成分を混ぜ合わせて製品を作る.この製品に含まれるの重さの比率のデータをとする.ここで,は
を満たす実数である.またの単位重量あたりの価格をとする.ただし,は
を満たす正の定数である.この製品の単位重量あたりの材料の費用は
で表される.
(A-1) 材料の費用が最小となるような,の値を求めよ.
(A-2) も
を満たす実数とする.
すべてのに対して
となるとき,それぞれの製品の材料の費用について
が成り立つことを示せ.
(A-3) とし,
が成り立つとする.このとき,材料の費用が最大となるような,を求めよ.
B コンピュータで扱うデータは,つの数字からなる列として表されることが多い.数字からなる長さの列を,送信者から受信者に転送することを考える.情報を転送する際にノイズが入るために,がに,がに,それぞれ確率で入れ替わって伝わる.ここで,はを満たす定数である.
例えば,長さの数字の列が
と伝わる確率は,番目の数字のみが入れ替わっているので,である.またが
と伝わる確率は,番目と番目の数字が入れ替わっているので,である.
(B-1) 数字からなる長さの列を回送るとき,誤って伝わる数字の個数が偶数個である確率をとおく.ただし,誤りがない場合は個の誤りがあったと考える.をとを用いて表せ.
(B-2) をとを用いて表せ.
データが誤って伝わる確率を小さくするために,データを表すからなる個の数字の列の後に,データの中にが奇数個あるときはを,偶数個あるときはを付け加えて,全部で個の数字の列をからに送る.この末尾に付け加える数字をバリティビットとよぶ.受信者は,パリティビットが,受け取ったデータの個の数字の中のの個数と合っていれば,情報が正しく送られたと判断してそのまま情報を受け取る.合っていなければ,情報が誤って送られたと判断して,に再度同じ情報,つまり個の数字の列とパリティビットを送ってもらう.この手続を,受信者が,正しくデータを受信できたと判断するまで繰り返す.ただし,パリティビットも,他の個の数字と同様に確率で入れ替わって伝わる.
(B-3) 送信者が,個の数字からなるデータとパリティビットを合わせて個の数字からなる列を回目に送るとき,受信者がに再送を要求する確率をとを用いて表せ.
(B-4) がデータを正しく受信したと判断して通信が終了するまでに,が送信する数字の個数の期待値をとを用いて表せ.
【2】 時間によって移動する点の動きなど,連続的に変化する現象を調べるときには,現象を表す関数の値を数列によって近似して,離散的なモデルを考えることができる.これらを対照して考察することや,連続的な現象を離散的なモデルの極限としてとらえることは,しばしば有効である.
A 数列に対して,とおく.数列は
を満たすとする.またとする.
(A-1) について,
が成立することを示せ.
(A-2) すべての自然数について,
を示せ.
(A-3)
となることを示せ.
数直線上を運動する点の座標を時間の関数としてで表す.ただし,とする.点の速度について
が成立するとする.また,とする.ここでは微分可能な関数であるとする.
(A-4) 不等式
が成り立つことを示せ.
(A-5)
を示せ.ただし,は自然対数を表す.
図2-1
図2-2
図2-3
B 図2-1のように,ひもの一方の端点を水平面に垂直な壁に固定し,もう一方の端点を壁とひものなす角が直角になるように手で持つ.このとき,手で持つ位置と壁の距離がどれくらいになるかを,次のように考察してみよう.
図2-2のように,質量がのおもりを,いくつか等間隔にひもでつなぎ,その一方の端を壁に固定して,他方の端を手で支える.ただし,それぞれのひもはまっすぐで,壁に固定されているひもは壁に垂直であるとする.となり合うおもりの間隔はとして,おもりの大きさとひもの太さ,およびひもの重さは無視することにする.壁の側から順番に,ひもをとし,それらのひもの張力の大きさを,それぞれとする.また,ひもが水平方向となす角度をとする.ここで,とおく.重力加速度をとする.
図2-3は,ひもとでつながれているおもりにかかる力がつり合っていることを表す.ここでは,それぞれひもの張力としておもりにかかる力のベクトル,はおもりにかかる重力のベクトルを表す.
(B-1) ベクトルの大きさは,それぞれであることをふまえて,これらのベクトルの成分表示をを用いて与えよ.
おもりにかかる力のつり合いの条件より,ベクトルの和は零ベクトルである.
(B-2) との関係をを用いて表せ.
(B-3) をを用いて表せ.
(B-4) とおく置換積分法により,定積分
の値を求めよ.
おもりの質量の和と,ひもの長さの和を固定する.おもりの個数を個とすると,
となる.このとき,ひもを手で支える位置と壁の距離をとおく.図2-1のように,質量がで長さがのひもの一方の端点を壁に固定して,もう一方の端点を手で持ち,壁とひものなす角が直角になるようにする.このとき,手で持つ位置と壁の距離は,極限値
で表されると考えられる.
(B-5) 上の極限値をを用いて表せ.