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【1】 この問題では,商業活動における意思決定のプロセスにおいて,最適に行動するにはどのようにすればよいかを,数学を用いて考える.
A ある商店街に軒の肉屋があり,いずれも唐揚げを売っている.肉屋は,同じ量の唐揚げを注文してもそれぞれ調理時間が異なり,かつ注文する量が多いほど時間が長くかかる.肉屋への注文量をそれぞれ調理時間をそれぞれ分,分,分とすると,のときのときのときの関係がある.またのときのときのときである.
今,さんが唐揚げを合計注文するものとする.(ただしは正の実数である.)その際,さんは複数の肉屋に分けて同時に注文してもよく,その場合には注文したそれぞれの店で要した調理時間の最大値がさんの待ち時間になり,その値を分とおく.また,軒の肉屋だけに注文する場合には,その店で要した調理時間がさんの待ち時間になる.
さんは待ち時間をできるだけ短くしようと試みる.そのために,全体の注文量を,それぞれの肉屋にどのように振り分けて注文すればよいかを考える.その際,注文しない肉屋があってもよい.また,複数の肉屋に分けて注文する場合,待ち時間を最短にするためには,注文したそれぞれの店で要した調理時間をすべて等しくすればよいことが知られている.なぜなら,もし調理時間にバラつきがあるなら,調理時間が長くかかる店の注文量の一部を調理時間が短い店に振り分ければ,全体の待ち時間を短くすることができるからである.解答にあたっては,この事実を用いてよい.
(A-1) まず,肉屋が休業中で,注文できる肉屋はの軒に限られる状況を考える.このとき,注文量の合計がのそれぞれの場合について,肉屋への注文量およびさんの待ち時間を求めよ.
(A-2) (A-1)と同じく,注文できる肉屋がの軒に限られている状況を考える.このときとなるの範囲を求めよ.
(A-3) 今度は,肉屋がいずれも開店中で,軒に注文できる状況を考える.このとき,さんの待ち時間をを用いて表せ.
B ある町に本の大通りがあり,その通りに沿ってにわたって均等に人が住んでいる.そこに何軒かのコンビニエンスストア(コンビニ)が出店を考えている.住民は日回,いずれかのコンビニに立ち寄る.また,その際,住民は自宅に一番近いコンビニに行く.各店は自分の店に来る客の数をなるべく多くするように出店位置を決める.
以上の状況を数学的に表すために,客が区間の上に均等に分布しており,店の出店位置は,上の点で表されるものとする.問題を分析しやすくするために,複数の店が同じ場所に出店することも可能であるとし,その場合には,その場所にやってくる客を各店が等分するものとする.たとえば,店がの軒あって,それぞれの出店位置をとし,仮にが成り立っていたとすると,来客数(の割合)は,とがそれぞれ
となる一方,は
となる.
(B-1) 店がの軒のときを考える.それぞれの出店位置をとする.
(a) のとき,の位置は変えずに,だけ適切に出店位置を変えればの来客数を増やすことができることを示せ.
(b) のとき,の位置は変えずに,だけ適切に出店位置を変えればの来客数を増やすことができることを示せ.
(c) のとき,のどちらに着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできないことを示せ.
(c)のような状況—すなわち,どの店に着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできない状況を「均衡」という.店が軒以上の場合も同様である.
(B-2) 店がの軒あるときを考える.それぞれの出店位置をとする.
(a) の場合は,均衡にならないことを示せ.
(b) の場合は,均衡にならないことを示せ.
(B-3) 店が軒あるときを考える.このとき,均衡は存在するか.もし均衡が存在するとすれば,軒の出店位置はどのようなものになるか.理由を添えて述べよ.
【2】 この問題では,割合や確率に関係したことがらについて考える.
図1 |
A の人が図1のように丸テーブルを囲んで座っており,それぞれ砂金をずつ持っているとする.ただしは正の定数である.今,人の各々が,自分の砂金のうち,の割合を右隣の人に,の割合を左隣の人に分け与え,残りのの割合を自分のところに残す操作を同時に行うとする.(図1のようにの右隣はの左隣はである.)ここでは,をみたす定数である.この操作を何度も繰り返し,最初から数えて回目()の操作を終えた時点でが持っている砂金の量を,それぞれとする.ただし,とおく.なお,砂金は自由な割合に何回でも分割できるものとする.
(A-1) を,を用いて表せ.
(A-2) とおく.は,によらないことを示せ.
(A-3) とおく.を,を用いて表せ.
(A-4) をどのように選んでもがのとき必ず収束するためのに関する必要十分条件を求めよ.また,そのときのの極限値を,を用いて表せ.
(A-5) とおく.このとき,ある定数を用いてと表すことができる.定数を求めよ.
(A-6) をどのように選んでもがのとき必ず収束することを示せ.また,そのときのの極限値を,を用いて表せ.
(A-7) をどのように選んでもの各々がのとき必ず収束するためのに関する必要十分条件を求めよ.また,そのときのの極限値を,を用いて表せ.
B 発電所から,いくつかの町に電気を送る送電網について考える.各地点を結ぶ送電線は,場合によっては何らかの理由により切断され,電気を遅れなくなることもある.
図2 |
(B-1) 図2のように,地点に発電所があり,に町がある.送電網は数学的に単純化して考えて図2のように本の送電線からなるとする.(図の本の線分が本の送電線を表す.)各送電線は,それぞれ独立に,電気を通す確率が切断され電気を通さない確率がであるとする.ただし,でである.このとき,発電所から送電して町に電気が通じる確率を町と町の両方に電気が通じる確率をとおく.をを用いて表せ.(を求める必要はない.)
図3 |
(B-2) 今度は,図2の送電網をつ組み合わせて得られる図3のような送電網を考える.このとき,発電所から送電して町に電気が通じる確率を,(B-1)で定義したを用いて表せ.