2011 東京大学 後期 総合科目IIMathJax

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2011 東京大学 後期 総合科目II

易□ 並□ 難□

【1】 この問題では,商業活動における意思決定のプロセスにおいて,最適に行動するにはどのようにすればよいかを,数学を用いて考える.

A ある商店街に 3 軒の肉屋 X Y Z があり,いずれも唐揚げを売っている.肉屋 X Y Z は,同じ量の唐揚げを注文してもそれぞれ調理時間が異なり,かつ注文する量が多いほど時間が長くかかる.肉屋 X Y Z への注文量をそれぞれ x kg y kg z kg 調理時間をそれぞれ s 分, t 分, u 分とすると, x>0 のとき s= 4+ 23 x y> 0 のとき t= 6+ 13 y z >0 のとき u= 7+z の関係がある.また x= 0 のとき s= 0 y=0 のとき t= 0 z=0 のとき u =0 である.

 今, A さんが唐揚げを合計 a kg 注文するものとする.(ただし a は正の実数である.)その際, A さんは複数の肉屋に分けて同時に注文してもよく,その場合には注文したそれぞれの店で要した調理時間の最大値が A さんの待ち時間になり,その値を T 分とおく.また, 1 軒の肉屋だけに注文する場合には,その店で要した調理時間が A さんの待ち時間 T になる.

  A さんは待ち時間 T をできるだけ短くしようと試みる.そのために,全体の注文量 a を,それぞれの肉屋にどのように振り分けて注文すればよいかを考える.その際,注文しない肉屋があってもよい.また,複数の肉屋に分けて注文する場合,待ち時間を最短にするためには,注文したそれぞれの店で要した調理時間をすべて等しくすればよいことが知られている.なぜなら,もし調理時間にバラつきがあるなら,調理時間が長くかかる店の注文量の一部を調理時間が短い店に振り分ければ,全体の待ち時間を短くすることができるからである.解答にあたっては,この事実を用いてよい.

(A-1) まず,肉屋 Z が休業中で,注文できる肉屋は X Y 2 軒に限られる状況を考える.このとき,注文量の合計が a= 2 a=6 のそれぞれの場合について,肉屋 X Y への注文量 x y および A さんの待ち時間 T を求めよ.

(A-2) (A-1)と同じく,注文できる肉屋が X Y 2 軒に限られている状況を考える.このとき y> 0 となる a の範囲を求めよ.

(A-3) 今度は,肉屋 X Y Z がいずれも開店中で, 3 軒に注文できる状況を考える.このとき, A さんの待ち時間 T a を用いて表せ.

B ある町に 1 本の大通りがあり,その通りに沿って 1 km にわたって均等に人が住んでいる.そこに何軒かのコンビニエンスストア(コンビニ)が出店を考えている.住民は 1 1 回,いずれかのコンビニに立ち寄る.また,その際,住民は自宅に一番近いコンビニに行く.各店は自分の店に来る客の数をなるべく多くするように出店位置を決める.

 以上の状況を数学的に表すために,客が区間 [0 ,1] の上に均等に分布しており,店の出店位置は, [0,1 ] 上の 1 点で表されるものとする.問題を分析しやすくするために,複数の店が同じ場所に出店することも可能であるとし,その場合には,その場所にやってくる客を各店が等分するものとする.たとえば,店が X Y Z 3 軒あって,それぞれの出店位置を x y z 0 x y z 1 とし,仮に x= y<z が成り立っていたとすると,来客数(の割合)は, X Y がそれぞれ

1 2× x +z2 = x+z 4

となる一方, Z

1- x+z 2

となる.

(B-1) 店が X Y 2 軒のときを考える.それぞれの出店位置を x y とする.

(a)  x<y のとき, Y の位置は変えずに, X だけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ.

(b)  x=y 1 2 のとき, Y の位置は変えずに, X だけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ.

(c)  x=y= 12 のとき, X Y のどちらに着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできないことを示せ.

 (c)のような状況—すなわち,どの店に着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできない状況を「均衡」という.店が 3 軒以上の場合も同様である.

(B-2) 店が X Y Z 3 軒あるときを考える.それぞれの出店位置を x y z とする.

(a)  x<y z の場合は,均衡にならないことを示せ.

(b)  x=y= z の場合は,均衡にならないことを示せ.

(B-3) 店が 4 軒あるときを考える.このとき,均衡は存在するか.もし均衡が存在するとすれば, 4 軒の出店位置はどのようなものになるか.理由を添えて述べよ.

2011 東京大学 後期 総合科目II

易□ 並□ 難□

【2】 この問題では,割合や確率に関係したことがらについて考える.

2011年東京大後期【2】の図
図1

A  A B C D 4 人が図1のように丸テーブルを囲んで座っており,それぞれ砂金を a kg b kg c kg d kg ずつ持っているとする.ただし a b c d は正の定数である.今, 4 人の各々が,自分の砂金のうち, p の割合を右隣の人に, q の割合を左隣の人に分け与え,残りの (1 -p-q ) の割合を自分のところに残す操作を同時に行うとする.(図1のように A の右隣は B A の左隣は D である.)ここで p q は, 0p 1 0 q1 p+q 1 をみたす定数である.この操作を何度も繰り返し,最初から数えて n 回目( n= 1 2 3 )の操作を終えた時点で A B C D が持っている砂金の量を,それぞれ a n kg bn kg c nkg dn kg とする.ただし, a0 =a b 0=b c0 =c d 0=d とおく.なお,砂金は自由な割合に何回でも分割できるものとする.

(A-1)  an+ 1 bn +1 c n+1 dn+ 1 を, an bn cn dn を用いて表せ.

(A-2)  Xn= an+ bn+ cn+ dn n =1 2 3 とおく. Xn は, n によらないことを示せ.

(A-3)  Yn= an+ cn- bn- dn n =1 2 3 とおく. Yn+ 1 を, Yn を用いて表せ.

(A-4)  a b c d をどのように選んでも an +cn n のとき必ず収束するための p q に関する必要十分条件を求めよ.また,そのときの a n+c n の極限値を, a b c d を用いて表せ.

(A-5)  Zn= (a n-cn )2 +( bn- dn) 2 n =1 2 3 とおく.このとき,ある定数 K を用いて Z n+1 =K Zn と表すことができる.定数 K を求めよ.

(A-6)  a b c d をどのように選んでも Zn n のとき必ず収束することを示せ.また,そのときの Zn の極限値を, a b c d を用いて表せ.

(A-7)  a b c d をどのように選んでも an bn cn dn の各々が n のとき必ず収束するための p q に関する必要十分条件を求めよ.また,そのときの an の極限値を, a b c d を用いて表せ.

B 発電所から,いくつかの町に電気を送る送電網について考える.各地点を結ぶ送電線は,場合によっては何らかの理由により切断され,電気を遅れなくなることもある.

2011年東京大後期【2】の図
図2

(B-1) 図2のように,地点 O に発電所があり, A B に町がある.送電網は数学的に単純化して考えて図2のように 6 本の送電線からなるとする.(図の 1 本の線分が 1 本の送電線を表す.)各送電線は,それぞれ独立に,電気を通す確率が p 切断され電気を通さない確率が q であるとする.ただし, p q >0 p+ q=1 である.このとき,発電所 O から送電して町 A に電気が通じる確率を α A と町 B の両方に電気が通じる確率を β とおく. α p q を用いて表せ.( β を求める必要はない.)



2011年東大後期【2】の図
図3

(B-2) 今度は,図2の送電網を 3 つ組み合わせて得られる図3のような送電網を考える.このとき,発電所 O から送電して町 C に電気が通じる確率を,(B-1)で定義した α β を用いて表せ.



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