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【1】 与えられた状況の中で最適な結果を生み出すための戦略について考える.
A 小売業者は,生産者の商品と消費者のニーズを結びつけ,取引を促進する役割をはたす.小売業者の経済活動を,以下に考察しよう.
小売業者は,ある商品について,一単位当りの買取価格を円に設定して,生産者の供給単位を購入する.さらに,小売業者は,一単位当りの販売価格を円に設定して,消費者の需要単位の買い注文を受ける.は正の実数とする.
単位を供給する際,生産者には生産コスト円が発生する.生産者は,一単位当り円で単位を売却することで得られる利潤円を最大にするようにを決定する.生産コストは
であるとする.は正の実数である.
消費者は,単位を消費することによって,金銭に換算して円に相当する満足を得ることができ,円を最大にするようにを決定する.消費者の満足は
であるとする.は正の実数である.
(A-1) 生産者が決定するをとを用いて表せ.
(A-2) 消費者が決定するをとを用いて表せ.
(A-3) 小売業者はとを直接知ることはできないが,過去のデータからこれらを推定できることがある.仮に以下の二つのデータが得られた場合,それから推定されるとを求めよ.
データ1:価格をに設定した際,超過需要単位が発生した.すなわちになった.
データ2:価格をに設定した際,超過供給単位が発生した.すなわちになった.
(A-4) 小売業者はとを一意的に推定するのに十分なデータを入手できるとは限らない.小売業者は,設問(A-3)における二つのデータではなく,実際には以下のデータのみが入手できた.
データ3:価格をに設定した際,供給と需要が一致した.すなわちになった.
小売業者は,販売収入の買取支出の差額として得られる利益円をできるだけ大きくしたいと考えている.その際,需要が供給を上回らないようにとを設定するものとする.データ3を用いて,小売業者が設定するとを求めよ.
B 重さがグラムのいずれかであることがわかっている物体があり,天秤を使ってこの物体の重さグラムを決定したい.ここでは以上の整数である.天秤は,回の計測ごとに,任意に指定した整数値(ただし)に対して,とのどちらが成り立つかだけを判定できる.天秤を用いる回数がなるべく少なくてすむような方法で物体の重さを決定したい.
さんの方法は,まずとして,であるかであるかを判定する.もし前者であれば,となり,の値が決まる.もしであれば,次にとして,であるかであるかを判定する.このようにして,の値を一番小さいものからずつ上げていって,最終的にを決定するやり方である.
これに対しさんの方法は,まず全体の中央値を超えない最大整数をとして,であるかであるかを判定することによりのとり得る範囲をほぼ半分の幅に狭める.次に,狭めた範囲の中央値を超えない最大整数をとおいて,がとり得る範囲をさらにほぼ半分に狭める.以下同様の操作を繰り返しての範囲を狭めていき,最終的にを決定するやり方である.
(B-1) さんの方法でを決定するのに必要な天秤の使用回数の最大値をで表せ.
(B-2) を満たすすべての整数に対して,である確率がであるとする.このとき,さんの方法でを決定するのに必要な天秤の使用回数の期待値をで表せ.
(B-3) とする.ただしは正の整数である.このとき,さんの方法でを決定するのに必要な天秤の使用回数をで表せ.
次に,さんやさんの方法に限らない一般の方法も含めて考えよう.ここにいう「方法」とは,天秤を使用する際に指定する整数値の選び方を,あらかじめ定めておくやり方を指す.ただし,回目以降の計測の際には,それ以前の計測による判定結果をふまえてを定めてよいものとする.
(B-4) とし,はからまでの任意の整数値をとり得るとする.このとき,天秤をたかだか回用いるだけでを必ず決定できる方法は存在しないことを示せ.
(B-5) とする.整数に対して,である確率が,のときであり,のときはであることがわかっているとする.このとき,天秤の使用回数の期待値を以下にする方法を見いだせ.
【2】 単純な操作を組み合わせて複雑な運動や図形を生み出すプロセスについて考える.
図1
A 図1のように長さの剛体の棒と長さの剛体の棒が連結されたロボットアームを考える.の片方の端は原点に固定されていて,他方の端はの一方の端と関節で結ばれている.の他方の端を手先と呼ぶことにする.関節にはモーターが組み込まれており,紙面に垂直な軸を中心として回転できるものとする.が軸となす角度をがとなす角度をとする.ただしは反時計回りを正とする.
(A-1) 手先の位置をを用いて表せ.
(A-2) 手先の通過し得る範囲を図示せよ.ただし,回転角は独立に自由な値をとり得るものとする.
(A-3) 手先の速度ベクトルとそれぞれの回転角の速度の間には以下の関係式が成り立つ.
をを用いて表せ.
(A-4) 設問(A-3)で求めたの間にという関係が成り立つのはがどのような場合か.また,このとき手先の速度ベクトルにどのような制限が加わるか答えよ.
(A-5) 関節のモーターのみの回転運動によって生じる手先の速度ベクトルと,関節のモーターのみの回転運動によって生ずる手先の速度ベクトルについて考える.速度ベクトルが直交し得るためのの関係を求めよ.
B 複雑な幾何学的図形の特徴を,さまざまな尺度でとらえてみよう.図形の特徴を表す概念として次元がある.たとえば,線分の次元はであり,平面上の正方形や円などの次元はであるが,整数でない次元をもつ複雑な図形も存在することが知られている.
いま,図2のように,一定の操作の繰り返しにより構成される図形の列を考察しよう.はじめに,一辺の長さの正方形をとする.を,一辺の長さの個の小正方形に分割し,中央の小正方形を取り去ったものをとする.また,それぞれの小正方形を一辺の長さのユニットと呼ぶ.次に,を構成する個のユニットのそれぞれについて,これを個の小正方形に分割し,そこから中央の小正方形を取り去ったものをとする.また,この分割で得られたそれぞれの小正方形を一辺の長さのユニットと呼ぶ.以下,同様の操作を繰り返して得られる図形をとする.
図2 |
(B-1) を一辺の長さのユニットで覆うと個を要するが,以降の図形では個を要する.では,これらの図形を一辺の長さのユニットで覆うと,何個を要するか.のそれぞれについて答えよ.
(B-2) (は正の整数)に対して,一辺の長さのユニットで各図形を覆うのに要する個数は,ある番号以降のに対しては一定となる.この値をとするとき,をを用いて表せ.
(B-3) 適当な正の実数を選ぶと,が限りなく大きくなるとき,が正の実数に収束することが知られている.そのようなの値を求めよ.
一般に,平面上に何らかの図形が与えられたとき,この図形を一辺がの正方形(ただしは正の整数)何個で覆うことができるかを考えてみる.覆うのに必要な個数をとすると,適当な実数に対してが有限な正の実数になることがある.そのような場合に,この図形がもつ次元はであると定義することができる.半透明な方眼紙を重ね,図形が何個の升目(ますめ)で覆われるかを,方眼を次第に細かくしながら数える,と考えてもよい.正方形や円などの平面図形ではは有限な正の実数に収束するのでであるが,一般にはは整数でない値をとり得る.上の設問(B-3)で求めたは,のいわば極限として見えてくる図形がもつ次元と見なすことができる.
次に,図形の作り方の規則を変えて,図3のような図形の列を考える.はじめに,一辺の長さの正方形を,一辺の長さの正方形個に分け,右上のユニットについては,左下の一辺の長さの正方形を取り去る.こうして得られた図形をとする.次に,残った個の,欠損のないユニットのそれぞれについて,同様の操作を行う.すなわち,それぞれを個の一辺の長さのユニットに分け,右上のユニットについては左下の一辺の長さの正方形を取り去る.得られた図形をとする.続いて,に含まれる一辺の長さの,欠損のない各正方形ユニットについて,同様の操作を行う.得られた図形をとする.これを繰り返して得られる図形の列をとする.
(B-4) 図2の場合と同じように,この操作を限りなく続けると,次第に複雑な図形が見えてくる.このように作られた図形を,一辺の長さの正方形ユニット(は正の整数)で覆うのに要する個数を数えてみると,ある番号以降のに対してこの個数は一定となる.この値をとするとき,をを用いて表せ.
(B-5) を限りなく大きくしていくと,ある正の実数に対しは正の極限値に収束する.このことを仮定して,の値を求めよ.
(B-6) の極限として見えてくる図形に対して,これまでと同じ考え方に基づいて次元を定めることができる.このの値をを用いて表せ.
図4 |