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2012 東京工業大学 後期第7類総合問題

易□ 並□ 難□

【3】 次の文章を読み,設問(1)〜(4)に答えよ.

 果樹園の木を密に植えた場合,高い収穫量が期待できるが,万が一火災が発生した場合,木と木との間隔が小さいため,火災が木から木へと伝播して果樹園全体が燃えてしまう危険がある.逆に,木を粗に植えた場合,火災が発生しても果樹園全体が燃えてしまう可能性は低いが,収穫量は減る.それでは,ある程度の収穫量を維持しながら,火災が発生した際に,被害を最小限に食い止めるには,どのような密度で木を植えれば良いだろうか.この問題を考えるために,以下のような簡単なモデルを導入し調べてみよう.

図1の正方形の集まり(果樹園)を考え,木が 1 本植えられている正方形の区画と,植えられていない正方形の区画があるとする.木が植えられている正方形の存在確率を p とすると,木が植えられていない正方形の存在確率は 1 -p である.すなわち p =1 の時,すべての正方形に木が植えられている状態となる.また p <1 の時,木はランダムに植えられているものとする.

2012年東工大後期第7類総合問題【3】の図

図1:果樹園を正方形の集まりと考える.上記図の黒丸の正方形には木が植えられており,空白の正方形には木が植えられていない.この図の場合,木が植えられている正方形の存在確率は p =0.32 となる.



次に火災の発生とその伝播(延焼)を考える.果樹園の上端に火災が発生した時,その火事が果樹園の木を伝わっていき,最下段の木まで到達するかどうかを考える.まずは,燃えている木から他の木にどのように火事が伝播していくのかを明確にするために,以下の【調べ方】に従って正方形を規則的に一つずつ調べて行く.

【調べ方】

・第 1 行の左端から順番に右へ 1 本ずつ,その木が隣接する木に火事を移せるかどうかを確認する. 1 本の木から火事が延焼する範囲は,隣接している木だけであり,それよりも遠くの木には燃え移らない.隣接している状態とは,上下左右の正方形のみで斜め方向の正方形は除外する.

・第 1 行の調査が終われば,第 2 行に進み同様の確認をしていく.これを繰り返して最後の行まで調べる.

・この調査の間に,燃えている木に隣接している木には火が燃え移る.

・すべての正方形を一巡したら,時間を 1 単位だけ進める.ちょうど燃えだした木の右隣と直下の木は,同一の単位時間内に燃えており,直上と左となりの木は次の単位時間に燃えていることになる.

1 単位の時間のあいだ燃えた木は燃え尽きてしまう.

・火事が最後の行まで到達するか,果樹園内に燃えている木がなくなった時点で,この火災は終了したものとする.

・同じ面積の果樹園で,同一の確率 p の異なった木の分布を作り,同様の実験を繰返す.それぞれの分布で,火災が終わるまでに要した時間,つまり火災が終了するまでに果樹園を巡回した回数を求め,その時間を調べた分布全体について平均したものを,この火災の寿命と定義する.



(1) 図2のような果樹園の場合,果樹園上端の木に発生した火災はどのように伝播していくだろうか.火災発生から終了まで,単位時間ごとに,燃えている木および燃え尽きた木のある正方形を斜線で塗りつぶせ.なお,解答用紙には 巡目までの図が用意してある.このうち必要な分だけ図を使うこと.

2012年東工大後期第7類総合問題【3】の図

図2:図1と同様に,図の黒丸の正方形には木が植えられており,空白の正方形には木が植えられていない.この図の場合,木が植えられている正方形の存在確率は p =0.44 となる.上端の斜線部分に火災が発生するものとする.



(2) 果樹園における木の存在確率 p と,果樹園内で発生した火災の寿命とはどのような関係になるか.横軸に木の存在確率 p を,縦軸に果樹園内で発生した火災の寿命をとり,グラフを描け.

(3) 生産効率を上げながらも,火災発生時の被害を極力減らすにはどのように木を植えれば良いか.(2)で描いたグラフをもとに考察し 50 字程度で記述せよ.

(4) 上述した果樹園の火災問題と似ている現象を挙げ,その現象に関して考察し 100 字程度で記述せよ.

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