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【1】 ローンの返済計画や確率を伴うゲームを数理モデルにより考察しよう.
A 住宅ローンなどで資金を借りた場合,返済総額は,利子の支払いのために元金より多くなり,また返済方式によっても異なってくる.このことを数理モデルにより考察しよう.なお,金額は連続量として扱う.
元金を借りる.利子は借入日から年毎に,過去年間の借入残高に対して年利率で発生する.返済も借入日からちょうど年毎に行う.そして借入日から年後に返済を完了する.従って,借入日から数えて年後からの年間を通じての借入残高を借入日から数えて年後の返済額をとすれば,および
(#)
が成り立つ.ただし,元金および年利率は正の実数,年数およびは整数とし,とする.
(A−1) 毎年一定の金額を返済していく方式,すなわちという方式を元利均等返済とよぶ.この返済方式による借入残高を特にと書く.をを用いて表せ.さらに,年後に返済を完了することに注意して,および年間の返済総額をを用いて表せ.
(A−2) 毎年,元金の一定の割合を返済し,それに加えて過去年間の借入残高に対して発生した利子全額をただちに返済していく方式を,元金均等返済とよぶ.この返済方式による借入残高を特にと,また返済額を特にと書く.およびをを用いて表せ.さらに年間の返済総額をを用いて表せ.
元利均等返済および元金均等返済におけるは同一の値をとることとして以下の問答えよ.
(A−3) 元利均等返済の毎年の返済額と,元金均等返済の借入日から年後の返済額の差の正負を判定することにより,とのどちらが大きくなるか答えよ.
(A−4) 元利均等返済の返済総額と元金均等返済の返済総額はどちらが大きくなるか答えよ.
B 以下のようなゲームを考える.
(1) 大きな木の周囲に,人の子供たちが円を作って木の外側を向いて立っている.ただしとする.
(2) ゲーム開始時点の状態(初期状態)において,それぞれの子供は紙でできたチケットを枚または枚持っている.子供たちの持つチケットの総数はである.ただしは奇数であるとする.
(3) ゲーム開始分後に太鼓の合図がある.子供たちは合図を聞いたらすぐさま次の行動(*)をする.
(*) | (a) チケットを持っている子供は,それぞれの手元にあるコインを投げ,表が出ればチケットを右隣の子供に手渡す(「パス」する),裏が出ればチケットをそのまま持っておく(「キープ」する).ただしコインの表,裏の出る確率はともにとする. |
(b) 上記(a)でキープした子供が,左隣の子供からチケットをパスされた場合には,手にした枚のチケットをまとめて捨てる. |
(4) 太鼓の合図はゲーム開始分後,分後,と分毎にあり,そのたびに子供たちは上記(3)の行動(*)をくり返す.
自然数とに対して,ゲーム開始後分後の太鼓の合図に従った行動(*)の直後に,子供たちの持つチケットの総数が枚である確率をと書く.
(B−1) のとき,の値を求めよ.
ゲームが進んでいくにつれて,子供たちのうち一人だけがチケットを持っている状態が現れうる.この状態を定常状態とよぶ.
(B−2) 次のような特別な状況を考えよう.ある特定の子供はパスを行うことはなく,以外の子供はキープを行うことはない.ということがくり返される.この状況においては,全体の状態はいずれ定常状態にいたる.このことを用いて次を示せ.
ゲーム開始分後の太鼓の合図に従った行動(*)の直後に定常状態である確率は,
以上である.
(Bー3) 極限を求めよ.ただし,はゲーム開始分後の太鼓の合図に従った行動(*)の直後に定常状態となっている確率を表すことに注意せよ.
定常状態におけるチケットの動きについて考えよう.
(Bー4) 定常状態において,ある子供がチケットを受け取ったのち,そのちょうど分後(ただしは自然数)に初めてチケットをパスする確率をと書く.この子供がチケットを持ち続ける時間の期待値,すなわち無限級数の和を求めよ.
図1
【2】 証明のあて方や製品管理をより効果的・効率的に行うための解析に数理モデルを用いることができる.
A 次の点を頂点とする正面体(図1)を考える.
平行な光をその正面体に照射する.その光の向きを
(ただし,
とする.また,正面体のつの面のうち,光のあたっている面の個数をとする.ただし,光の向きと面が平行な場合は,その面には光はあたっていないと考える.なお,正 面体は光が一切透過しない素材でできているとする.
以下の(A−1),(A−2),(A−3)においては答えを述べるだけでよい.
(A−1) はどのような値を取り得るか答えよ.
さらに,同じ空間内に光の向きと垂直で,正面体と交わらない平面があるとする.その平面をスクリーンと見立てよう.そのスクリーンは正面体の後方にあり,その上に正面体の影が生じているとする.その影は角形であるとする.
(Aー2) はどのような値を取り得るか答えよ.また,との組としてはどのようなものがあり得るか答えよ.
(Aー3) が(A−2)で挙げたおのおのの組であるとき,光があたっているのはどの面か答えよ.ただし,例えばを頂点とする面はと記せ.
次の問に対しては答えだけでなく理由も述べよ.
(Aー4) が(Aー2)で挙げたおのおのの組であるのは,がどのような範囲にあるときか.
B 倉庫に個(ただし)の異なった製品が保管されている.それらを製品製品製品とよぶ.それらの製品は倉庫の出入り口から奥に向かって列に置かれている.ここで出入り口から近い順で番目(ただし)に於かれている製品を倉庫から搬出するのに要する時間をとし,と仮定する.
一方,製品(ただし)が注文される確率をとする.ただし,をみたすとする.ここで,つの製品に注文があったとする.製品は出入り口から近い順に製品製品製品の順に並んでいるとすれば,搬出に要する時間の期待値はとなる.ただし,にはからの番号がちょうど回ずつ現れる.
製品の配列順序を変えたときのの変化を調べるために以下のような定式化を行う.より一般的に,個の相異なる自然数からなる列を次列とよぶ.ただし,つの次列にたいして,のときそうでないときとする.特にからの自然数がちょうど回ずつ現れる次列を標準次列とよぶ.例えば標準次列は以下の個である.
つの次列にたいして,以下の条件(*)が成り立つとき,と書く.
(*) | およびをみたす任意のとにたいしてが成立する. |
特にかつのときと書く.
以下の問に答えよ.
(Bー1) を標準次列とする.をみたすが存在しないようなを求めよ.逆にをみたすが存在しないようなを求めよ.
(Bー2) 次列にたいして,
が成立するときと書く.次列にたいして,を小さい順に並べてできる次列をと書く.例えば次列にたいしては,である.また次列から右側の個(ただし)の数を除去してできる次列をと書く.例えば次列にたいしては,である.
このとき以下の(ア),(イ)を示せ.
(ア) 次列にたいして,かつならば,が成り立つ.
(イ) 特に標準次列にたいして,ならば,すべての(ただし)にたいしてが成り立つ.
(Bー3) 各製品(ただし)が注文される確率にたいして
が成り立つとする.標準次列がをみたすとする.このときすべての(ただし)にたいして
が成り立つことを示せ.
問は以上であり,以下はこの問題に対する補足である.
標準次列がをみたすとする.このとき,(Bー3)で示した不等式を用いて,を証明することができる.すなわち,搬出時間の観点からすれば,よりもの方が良い配列,あるいはととは同程度に良い配列といえる.この事実を搬出時間の短縮に活用することが可能である.