【4】 以下の文を読み,その中にある問に答えよ.
自然数とは以上の整数を意味する.
定義:を自然数とする.個の自然数の組が組であるとは,が成り立つことであると定義する.
例えばなので,は組である.なので,は組である.また,組の例としてはなどがある.
注意:この組の定義ではの並び順も重要である.組を並べ替えると組にならないことがある.例えばはとなるので組だが,は組にはならない.
しかし,が組ならば,もやはり組になることは定義から明らかである.
いろいろなの値に対して組が存在する一方で,組が存在しないようなの値もあるのである.ここでは次の定理を証明する.
定理:組は存在しない.
この定理の証明のために,まず次の命題が成り立つことを証明しよう.
命題1:とを自然数とする.がの倍数なら,とはともにの倍数である.
命題1の証明:をで割ったときの商を余りをとする.をで割ったときの商を余りをとする.となっている.また,とはそれぞれのどれかである.
である.がの倍数であり,
となるので,もの倍数である.従って,でなければならない.
問1:なぜがの倍数ならでなければならないのか,その理由を説明せよ.
以上から,とはともにの倍数であることが証明された.[命題1の証明終り]
定理の証明:定理の証明を背理法で行う.すなわち,定理が成り立たないと仮定して矛盾が生じることを示す.
定理が成立しないと仮定しよう.定理が成立しないということは,ある組が少なくともつ存在することになる.
ここで,組に対して,の値を組の左値と呼ぶことにする.定義から明らかに,左値の値は以上の自然数である.
組はただつとは限らず,いろいろなものがあるかもしれないが,それらの中で,その左値が最も小さくなるようなものがあるはずである.このことは当然だとも言えるだろうが,ここではこれを厳密に証明してみよう.
命題2:組が存在するならば,それらのなかで,その左値が最も小さくなるものが存在する.
命題2の証明:これも背理法で証明してみよう.
この命題2が成り立たないとすると,左値が最も小さくなるような組は存在しないことになる.ということは,組があれば,この左値の値は最小ではないので,必ずある別の組があって,となる.このことから矛盾が生じてしまう.
以上から,組が存在するならば,そのような全体の中で,の値が最も小さくなるものが存在することが示された.[命題2の証明終わり]
左値が最も小さくなるような組はただつとは限らないが,そのようなもののつをとする.
(1)
が成り立っている.はの倍数なので,命題1より,ともの倍数である.従って,ある自然数があって,となっている.これを上の(1)に代入すると,
となるので,両辺をで割ると,
(2)
となる.これは,が組であることを示している.であったので,これは,が最小の左値を持つ組であることに矛盾する.
問3:なぜが最小の左値を持つ組であることに矛盾するのか,その理由を説明せよ.
組が存在すると仮定して矛盾が生じたので,組は存在しないことになる.以上から,定理は証明された.[定理の証明終り]