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2021 東京工業大学 総合型選抜工学院

易□ 並□ 難□

【1】 取りうる事象が 2 種類である試行を独立に n 回行ったときに,一方の事象が何回起こるかの確率分布を二項分布という.二項分布に従う典型的な確率変数としては,コイン投げによって表(もしくは裏)が出る回数が挙げられる.

 このように,我々の生活の中には様々な確率分布が存在する.ただ,残念ながら確率がわかっているという状況は現実では極めて稀なケースであり,現実には確率がわかっておらず,データから分布を推定しなければならないケースがある.

 いま,形が歪んでおり,表が出る確率がわからないコインを考える.そのわからない確率を θ とおく(ただし 0<θ <1 ). コインを投げる回数を n 表が出る回数を k とする.このとき「このコインを使用する」という前提のもとで表が k 回出る条件付き確率は

P(k |表が出る確率 =θ )=Ck n θk (1 -θ) n-k = n!( n-k)! k! θk (1 θ) n-k

で表される.ここで, 0!=1 C0 n=1 とする.さて,いま θ の値がわからないので,限られた回数だけコインを実際に投げて得たデータから確率 θ を推定したい.以下の問に答えよ.ただし,各問ごとにコインの歪み具合は異なるとする.

問1 確率 θ の値を推定する方法の一つに,尤度(ゆうど)関数と呼ばれる概念を使った最尤推定法という方法がある.まず,尤度関数とは,上記の条件付き確率 P θ の関数とみなし, n k には実際に投げて得たデータの値を代入して評価したものである.いま,ある歪んだコインを 3 回投げて 3 回とも表が出た.このときの尤度関数を L (θ) とおくとき, L(θ ) を求めよ.

表/裏(コイン1)
回数 4 1

問2 最尤推定法とは,尤度関数が最大値をとるような θ をその推定値とするような推定法である.ある歪んだコインを 5 回投げたところ,表が出た回数について右の表のような結果を得た.

 このとき,尤度関数を求めたうえで,上で説明した最尤推定法に従って θ の推定値 θ^ を求めよ.

問3 一般的に, n 回コインを投げたときに k 回表が出たとする.このとき,最尤推定法を用いて得た θ の推定値 θ^ k/n となることを証明せよ.

表/裏(コイン1)
回数 11 9

表/裏(コイン2)
回数 24 26

 次の問4以降は,歪み方の異なる 2 つのコイン(コイン1とコイン2)を考える.それぞれ表の出る確率が θ1 θ2 であるが,前問と同様にそれらの値はわからないとする. A さんがコイン1については 20 回,コイン2については 50 回投げたところ,表が出た回数について右の表のような結果を得た.

 次に,別の B さんが A さんから1,2いずれかのコインを 1 つ受け取ったが,見た目が同じなためにどちらのコインを受け取ったかはわからず,したがって当初 B さんは「 1/2 の確率でコイン1, 1/2 の確率でコイン2」だと考えたとする.また, B さんは, A さんがそれぞれのコインを投げて得た上記の結果は知っているとする.

表/裏(コイン1or2)
回数 5 5

 その後, B さんが自らそのコインを 10 回投げたところ,出た回数について右の表のような結果を得た.

 さて,この結果から, B さんは受け取ったコインが1か2かをどのように判断するべきだろうか.以下ではこれを考察しよう.

問4 一般的に, X が起こる確率を P (X) Y が起こる確率を P (Y) そして X Y が同時に起こる確率を P (X,Y ) とするとき,「 X が実現した,という条件の下で Y が実現する確率」は

P( X|Y )= P(X ,Y) P(X )

で与えられ,これを Y X に関する条件付き確率という. P(Y |X ) は以下のようにも表現できることを示せ.

P( Y|X )= P( X|Y )P (Y) P(X )

これをベイズの定理という.

問5  B さんが得た結果「表が 5 裏が 5 を条件としたときの, B さんが受けとったコインが1である条件付き確率と2である条件付き確率を比較したとき,もし前者が大きければ B さんが受け取ったのはコイン1,後者が大きければコイン2と判断するとしよう.この場合, B さんのコインは1,2のどちらと判断するのが妥当か,根拠も含めて答えよ.

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