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2021 和歌山大学 前期追試経済学部

総合問題BⅠ

易□ 並□ 難□

【1】 次の文章を読み,問1と問2に答えなさい.

 正方形の板にペンキを塗る仕事がある.この仕事を引き受けるためには,ハケとペンキが必要である.ハケは, 1 [本]が B [円]である. 1 [m]の面積の板をちょうど塗りつぶせる分量のペンキは P [円]である.この仕事を引き受けたときの報酬は,正方形の板の一辺の長さに比例して得られることになっており,一辺の長さ 1 [m]あたり R [円]である.

 板を塗りつぶすときに,ハケは,板の面積に関わらず, 1 [本]で足りる.また,ペンキは,板の面積に対してちょうどの分量でよい.利益は,得られる報酬からペンキとハケに必要な費用を差し引いたものである.

 利益が得られるかどうかで,この仕事を引き受けるかどうかを決めたい.ただし, B>0 P>0 R0 である.

問1 次の(1)から(3)に答えなさい.

(1) 次の文章の空欄 に入る値もしくは記号等を答えなさい.

 一辺の長さが x [m]( x>0 とする)の正方形の板を塗りつぶす仕事がある.ペンキは,その正方形の板をちょうど塗りつぶせる分量があればよい.したがって,ペンキの費用は, [円]である.ハケは, 1 [本]で足りるから,この仕事を引き受ける上で必要なすべての費用は [円]である.この仕事の報酬から費用を差し引いた利益は [円]である.

(2) 一辺の長さが x [m]の正方形の板に対して, B=9 P=4 R=20 となっている仕事があります. 0 [円]以上の利益が得られる場合に,この仕事を引き受けるものとします.この仕事を引き受けるのは,一辺の長さがいくらのときですか. x の値の範囲として答えなさい.

(3) (2)において,最も多くの利益が得られるのは,一辺の長さがいくらのときですか. x の値として答えなさい.

問2 報酬 R の値がある範囲に含まれているときには,正方形の板の一辺の長さに関わらず,利益が 0 [円]以下になります.

 正方形の板の一辺の長さに関わらず,利益が 0 [円]以下になる報酬 R の値の範囲を,ハケの費用 B とペンキの費用 P を用いて表しなさい.

2021 和歌山大学 前期追試経済学部

総合問題BⅠ

易□ 並□ 難□

【2】 以下の文章を読み,問1から問3に答えなさい.

 ある国の一定期間における経済の動きを単純化して考える.この国は,他の国と貿易はしないものとする.代表的な 3 つの経済主体として,家計・企業・政府が国内に存在する.財・サービスへの家計による需要を「消費」とよび,その総額を C で表す.同様に,企業による需要を「投資」とよび,その総額を I 政府による需要を「政府支出」とよび,その総額を G で表す.この 3 つの経済主体による,財・サービスへの需要の合計 A を「マクロの総需要」とよぶ.すなわち.

A=C+I+ G (1)

である.

 家計は,稼得した所得額を基に消費 C を決定するが,稼得した所得をすべて消費に用いることはできない.所得の一部は税金として政府に徴収されるので,残った所得(これを「税引き後の所得」という)を基に,消費 C を決定することになる.

 家計が稼得できる所得は,この国の経済で発生したすべての所得とする.実際の経済では,企業も収入があるように思えるかもしれないが,それは労働者や経営者に給与として分配される.また企業の利潤などは,その会社の株主への配当として分配されている.よってこの経済では,所得のすべてが家計に分配されていると考える.

 この経済で発生する所得の総額を国民所得とよび, Y で表す.ここで,政府が家計から徴収する税金の額 T は,国民所得 Y に関係なく一定とする.このとき,消費 C は式(2)で表すことが可能とする.

C=C0+ c1( Y-T) C0>0 0<c1< 1 (2)

  Y-T は,税引き後の所得である. c1 は税引き後の所得に対して,どれだけを消費に回すのかを表す係数である. C0 は所得額に関係なく決まる消費を表し,この経済では定数とする.式(2)に従うと,国民所得 Y が増加すれば,税引き後の所得が増加し,消費も連動して増加する.

 更にこの経済では,投資 I と政府支出 G は,国民所得 Y とは関係のない定数とする.

 実際の経済を考えると需要を生産が上回った時には売れ残りが生じ,逆に需要を生産が下回る時には品不足などが発生し,調整には時間がかかることがある.しかし,この国の経済では,マクロの総需要に等しい生産が常に行われていると考える.また,この国で生産されたものは,所得としてすべて分配されると考える.つまり,国民所得とマクロの総需要は等しくなると考える.

問1 次の文章の空欄 に入る値もしくは記号等を答えなさい.ただし,同じ番号の空欄には同じ値もしくは同じ記号等が入ります.

 消費 C が式(2)で表されるとき,国民所得 Y の増加分を ΔY これに伴う C の増加分を ΔC とすると, ΔC ΔY となる.つまり,国民所得が α 増加すると,それに連動して消費は だけ増加することになる(ただし, α>0 ).

 ここで,政府支出 G の追加的な増加が,この国の経済に与える影響を考える. G β 増加した場合,式(1)に基づきマクロの総需要 A β 増加する(ただし, β>0 ).この A の増加は生産を喚起し,国民所得 Y を増加させる.この Y の増加に連動して,消費 C だけ増加する. C の増加は A の増加を意味するため, C 増加は Y だけ増加させる.この Y の増加に連動して, C は新たに だけ増加する.

 このように,政府支出 G の増加によってマクロの総需要 A が増加する. A の増加は生産を増加させるため,国民所得 Y を増加させる.この Y の増加に連動して消費 C が増加する.この C の増加は A の増加となり, Y はさらに増加する.それに連動して C がさらに増加し⋯と繰り返され, A は膨らんでいく.最終的な A の増加額は, G の増加によって生じた 1 回目の A の増加額 β と, 2 回目の A の増加額 3 回目の A の増加額 ⋯の合計額となる.

 このマクロの総需要 A の増加が n 回発生した場合,最終的なマクロの総需要の増加額合計は となる.

問2 次の文章の空欄 に入る値もしくは記号を答えなさい.ただし,同じ番号の空欄には同じ値もしくは同じ記号等が入ります.

 これまでは,政府は税金として T だけ徴収していた.ここでは,政府支出を増加させるのではなく,税徴収額を γ だけ削減し,税金徴収額を T-γ とする減税政策を政府が行った場合を考える(ただし, γ>0 ). γ の減税によって,税引き後の所得は 増加する.この税引き後の所得増加によって,消費 C 増加する. C の増加はマクロの総需要 A の増加を意味するため,国民所得 Y の増加に繋がる. Y の増加に連動して C が増加する.これを繰り返すことで A は膨らんでいく.最終的な A の増加額は,減税にともなう当初の A の増加額 と,それ以降の A の増加額の合計となる.

 このマクロの総需要の増加が n 回( γ の減税にともなう最初のマクロの総需要増加を 1 回目として数える)発生した場合,最終的なマクロの総需要の増加額の合計は となる.

問3 ここで,政府支出の増加を行う政策と減税政策の 2 つの効果の違いを考えます.問1で考察した政府支出増加政策と,問2で考察した減税政策について,仮に政府支出の増加額と減税額が同一であった場合(つまり β=γ ),どちらの政策を実施する方が,マクロの総需要をより多く喚起しますか.理由とともに示しなさい.なお,両政策ともマクロの総需要の増加は,問1,問2と同様, n 回発生するとします.

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