【3】 を以上の自然数とする.個の正の数に対し,これらの相加平均と相乗平均とはそれぞれ
のことである.これらについて不等式
(*)
が成り立つ.このことの証明を読み,後の各問に答えよ.
[証明](Step1) の場合
に関する数学的帰納法で示す.まず(ア)のとき題意が成り立つ.
次に,のとき(*)が成り立つとし,の場合を考える.このときとおくとである.
とおくと,数学的帰納法の仮定より
(イ)(**)
が成り立つ.また
である.したがって,の場合の結果と(**)から
が成り立つ.以上より,に対しては(*)は成り立つ.
(Step2) 一般の場合
(ウ)となる自然数がただつ存在する.よって,このときとかける.の場合はStep1で示されているから,としてよい.元の個の数に個のを加え,個の数
を考える.これらの相加平均と相乗平均をそれぞれとおくと,(エ)Step1よりである.
一方
より
(オ) | |
が成り立つ.またより
が成り立つ.よって
であるから
が得られる.(カ)したがってが成り立つ.
[設問]
(1) 下線部(ア)について,その理由を説明せよ.
(2) 下線部(イ)について,なぜここで数学的帰納法の仮定を用いることができるのかを説明せよ.
(3) 下線部(ウ)について,の場合にを求めよ.
(4) 下線部(エ)について,なぜStep1の結果を用いることができるのかを説明せよ.
(5) 下線部(オ)で用いられている考え方を踏まえて,次の問に答えよ.
ある高等学校の人からなるクラスの生徒の身長の平均値はセンチメートルだった.このクラスに,人の転校生が入った.人の身長はいずれもセンチメートルだった.このとき,人の身長の平均値に関して,どのようなことが言えるか.数式を用いた詳しい理由も記せ.
(6) 下線部(カ)について,その理由を説明せよ.
(7) 不等式(*)が成り立つという命題をとする.上の[証明]で用いられた考え方に基づけば,が成り立つことを前提としてが成り立つことを示すには,どのような手順を踏めばよいか.のうち必要なものを選び,証明される順に左から右に並べよ.その列はから始まりで終わることとなる.