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2022 和歌山大学 前期経済学部

総合問題B

易□ 並□ 難□

【1】 次の文章を読み,問1から問3に答えなさい.

 ある国の世帯所得の格差について考えてみよう.世帯をその所得の低い順に並べ,世帯数の累積比率を x とする.世帯所得が n 番目までの世帯数の累積は n であるから,全世帯数を N とすると x = nN となる.したがって, x は世帯を所得の低い順に見た場合の相対的位置でもある.たとえば, x=0.3 であれば,その世帯は(所得で見て)下位 30 % に位置することになる.

 一方, x 以下の世帯所得の累積比率を y とする. x 以下の世帯所得の累積を s とし,全世帯所得(すべての世帯所得の合計)を S とすると y = sS となる.

 このとき,関数 y =f( x) が描く曲線をローレンツ曲線と呼ぶ.以下,世帯数は十分に大きいとして, x y を実数, f( x) を実数から実数への関数とし,微分できる関数としてよいものとする(ただし,定義域の両端を除く).

2022年和歌山大前期経済学部総合問題【1】2022106410201の図

 たとえば, f( 0.5)= 0.3 であれば,下位 50 % までの世帯所得の累積は,全世帯所得の 30 % を占めることになる.また, f( x)= x2 であれば, f( 0.3)= 0.09 となるので,下位 30 % までの世帯所得の累積は,全世帯所得の 9 % を占めることになる.なお,世帯所得がすべて同じであれば,世帯数の累積比率と世帯所得の累積比率が一致するので f (x )=x となる.

 また, f( x) はその定義から,定義域が 0 x1 値域が 0 y1 となる関数で, f( 0)= 0 f( 1)= 1 となり, f( x) x である.また, f( x) は区間内で単調に増加する.

  y=x とローレンツ曲線 y =f( x) で囲まれる部分の面積を 2 倍したものはジニ係数と呼ばれ,その国の所得格差を示す指標としてよく用いられている.

 たとえば,所得がただ 1 世帯にすべて集中し,その他のすべての世帯の所得が 0 の場合, f( x)= 0 0x< 1 ), f( 1)= 1 となり, y=x y =f( x) で囲まれる部分の面積は, y=x x=1 y=0 で囲まれる直角三角形の面積,つまり 12 となるので,ジニ係数は最大値 1 をとり所得格差は最大となる.一方,世帯所得がすべて同じ場合,すなわち f (x )=x のとき,ジニ係数は最小値 0 をとり所得格差は最小となる.

 ローレンツ曲線の導関数 f (x ) について考えてみよう.世帯数の累積比率 x の増分を Δx 世帯所得の累積比率 y の増分を Δy とし,そのときの世帯数の累積の増分を Δn 世帯所得の累積の増分を Δs とする.また,全世帯数 N 全世帯所得 S から,世帯所得の平均 SN= A として,これを平均世帯所得と呼ぶこととする.以上を用いると, f (x ) は次のようになる.

f (x )= limΔx 0 Δy Δx =limΔn 0 Δs S ΔnN = lim Δn 0 ΔsΔn A

 ここで lim Δn 0 ΔsΔn は,世帯数の累積が 1 増えたときに,世帯所得の累積がどれくらい増えるかを表しているので, x に位置する世帯の所得を表しているとみることができる.したがって, f (x ) x に位置する世帯の所得が平均世帯所得の何倍であるかを表している.

  f( x)= x2 であれば f ( x)= 2x であるので,たとえば f ( 12) =1 となり,所得の順位で中央に位置する世帯が平均世帯所得を得ていることになる. f( x)=x であれば,すべての x において, f (x )=1 であるので,すべての世帯所得は平均世帯所得と一致する.

問1  P 国のローレンツ曲線は y =x3 である.このとき,以下の文章の (1) (5) に入る値を求めなさい.

P 国の下位 40 % の世帯所得の累積は,全世帯所得の (1) % を占める.また,下位 20 % の世帯から下位 80 % の世帯までの世帯所得の累積は,全世帯所得の (2) % を占める.

・ローレンツ曲線 y =x3 y =x で囲まれる部分の面積は (3) となるので, P 国のジニ係数は, (4) となる.

P 国の平均世帯所得は日本円で 300 万円である.このとき, P 国の下位 30 % に位置する世帯の世帯所得は日本円で (5) 万円となる.

問2  Q 国のローレンツ曲線は次の式である.

y= 15 x( 4x2 +1)

このとき,以下の(1)と(2)に答えなさい.

(1)  Q 国のジニ係数を求めなさい.

(2) ジニ係数は, y=x とローレンツ曲線で囲まれる部分の面積のみで決定され,ローレンツ曲線の形状は関係しない.それゆえ,その国の世帯所得の格差を表しているが,貧困世帯の割合を表しているわけではない.

 いま,世帯所得の中央値を m とするとき,世帯所得が 12 m 以下である世帯数の全世帯数に占める割合を貧困率とする. Q 国の貧困率を求めなさい.

問3 問1の P 国と問2の Q 国の両国は,世帯数と平均世帯所得が同じであり,平均世帯所得は日本円で 300 万円である.このとき,以下の(1)と(2)に答えなさい.

 必要であれば, 2= 1.414 3= 1.732 5= 2.236 7= 2.646 を用いなさい.

(1)  P 国と Q 国のそれぞれにおいて,平均世帯所得を得ている世帯は下位何 % に位置しますか.小数点以下を四捨五入して求めなさい.

(2) 世帯所得の点から,あなたは P 国と Q 国のどちらを望ましいと考えますか.理由もあわせて述べなさい.また,望ましくない方の国において,政府はどのようなことをすればよいでしょうか.あなたの考えを述べなさい.

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