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ある国の世帯所得の格差について考えてみよう.世帯をその所得の低い順に並べ,世帯数の累積比率をとする.世帯所得が番目までの世帯数の累積はであるから,全世帯数をとするととなる.したがって,は世帯を所得の低い順に見た場合の相対的位置でもある.たとえば,であれば,その世帯は(所得で見て)下位に位置することになる.
一方,以下の世帯所得の累積比率をとする.以下の世帯所得の累積をとし,全世帯所得(すべての世帯所得の合計)をとするととなる.
このとき,関数が描く曲線をローレンツ曲線と呼ぶ.以下,世帯数は十分に大きいとして,を実数,を実数から実数への関数とし,微分できる関数としてよいものとする(ただし,定義域の両端を除く).
たとえば,であれば,下位までの世帯所得の累積は,全世帯所得のを占めることになる.また,であれば,となるので,下位までの世帯所得の累積は,全世帯所得のを占めることになる.なお,世帯所得がすべて同じであれば,世帯数の累積比率と世帯所得の累積比率が一致するのでとなる.
また,はその定義から,定義域が値域がとなる関数で,となり,である.また,は区間内で単調に増加する.
とローレンツ曲線で囲まれる部分の面積を倍したものはジニ係数と呼ばれ,その国の所得格差を示す指標としてよく用いられている.
たとえば,所得がただ世帯にすべて集中し,その他のすべての世帯の所得がの場合,となり,とで囲まれる部分の面積は,で囲まれる直角三角形の面積,つまりとなるので,ジニ係数は最大値をとり所得格差は最大となる.一方,世帯所得がすべて同じ場合,すなわちのとき,ジニ係数は最小値をとり所得格差は最小となる.
ローレンツ曲線の導関数について考えてみよう.世帯数の累積比率の増分を世帯所得の累積比率の増分をとし,そのときの世帯数の累積の増分を世帯所得の累積の増分をとする.また,全世帯数全世帯所得から,世帯所得の平均として,これを平均世帯所得と呼ぶこととする.以上を用いると,は次のようになる.
ここでは,世帯数の累積が増えたときに,世帯所得の累積がどれくらい増えるかを表しているので,に位置する世帯の所得を表しているとみることができる.したがって,はに位置する世帯の所得が平均世帯所得の何倍であるかを表している.
であればであるので,たとえばとなり,所得の順位で中央に位置する世帯が平均世帯所得を得ていることになる.であれば,すべてのにおいて,であるので,すべての世帯所得は平均世帯所得と一致する.
問1 国のローレンツ曲線はである.このとき,以下の文章のに入る値を求めなさい.
•国の下位の世帯所得の累積は,全世帯所得のを占める.また,下位の世帯から下位の世帯までの世帯所得の累積は,全世帯所得のを占める.
・ローレンツ曲線とで囲まれる部分の面積はとなるので,国のジニ係数は,となる.
•国の平均世帯所得は日本円で万円である.このとき,国の下位に位置する世帯の世帯所得は日本円で万円となる.
問2 国のローレンツ曲線は次の式である.
このとき,以下の(1)と(2)に答えなさい.
(1) 国のジニ係数を求めなさい.
(2) ジニ係数は,とローレンツ曲線で囲まれる部分の面積のみで決定され,ローレンツ曲線の形状は関係しない.それゆえ,その国の世帯所得の格差を表しているが,貧困世帯の割合を表しているわけではない.
いま,世帯所得の中央値をとするとき,世帯所得が以下である世帯数の全世帯数に占める割合を貧困率とする.国の貧困率を求めなさい.
問3 問1の国と問2の国の両国は,世帯数と平均世帯所得が同じであり,平均世帯所得は日本円で万円である.このとき,以下の(1)と(2)に答えなさい.
必要であれば,を用いなさい.
(1) 国と国のそれぞれにおいて,平均世帯所得を得ている世帯は下位何に位置しますか.小数点以下を四捨五入して求めなさい.
(2) 世帯所得の点から,あなたは国と国のどちらを望ましいと考えますか.理由もあわせて述べなさい.また,望ましくない方の国において,政府はどのようなことをすればよいでしょうか.あなたの考えを述べなさい.