2022 和歌山大学 前期MathJax

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2022 和歌山大学 前期追試経済学部

総合問題B

易□ 並□ 難□

【1】   次の A 先生と B さんの会話を読み,問1と問2に答えなさい.

B さん(以下 B A 先生,ご無沙汰しております.」

A 先生(以下 A 「やあ, B さん.元気だった?」

B 「はい,元気にやっております.先日メールでお知らせしたように,このたび務先で製品 X の顧客担当になりました.そのことでいろいろ教えていただきたくて…お忙しいところお時間をとっていただきありがとうございます.」

A 「製品 X は,爆発的ヒットだったね.」

B 「ええ,おかげさまで,その製品の顧客の中から 10 万人以上の方に,ネット会員の登録をしていただいております.私は,そのネット会員に対して,どのようなサービスを提供するか企画することを任されています.そこで, A 先生にアドバイスをいただきたくて…」

A 「大体の話は先日もらったメールで理解しているよ.要するに, 10 万人のネット会員を対象にどんなサービスが考えられるか整理したいということだね.私の方であらかじめ検討してみたので説明するよ.」

B 「それは助かります.よろしくお願いします.」

A 「それには大きく 3 つの方向が考えられると思う.個々の会員に注目するサービス,会員間の関係に注目するサービス,会員同士のグループに注目するサービスの 3 つだよ.」

B 「ご説明いただけますか.」

A 「まず,個々の会員に注目するサービスだが,会員のひとり一人に,たとえば,楽曲などのコンテンツを販売するようなサービスだ. a 円のコンテンツを n 人に販売すると, (1) 円の収益(売上)を得ることができるね.これは,コンテンツの販売に限らず,個別の会員に対するプロモーション(販売促進・宣伝活動)でも同じような効果を得ることができる.たとえば,テレビは視聴者それぞれにコマーシャルのメッセージを届けることができ,視聴者数に比例して宣伝効果は高くなる.したがって,この場合は会員数 n に比例した価値を生み出すことが期待できるね.」

B 「なるほど,会員数が 10 万人ですから, 1 人から 100 円を得ることができれば,全体の収益は (2) 円になりますね.」

A 「そうだね.次に,会員間の関係に注目するサービスを考えてみよう.会員間で何らかの関係を結んでもらうような仕組みを考える.例として,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の友達関係があげられる.友達関係は,現実の世界でも同様だが,基本的な関係は 2 人の間の関係になる.電話やメールも 2 人の間の関係の集まりだね.たとえば,電話は加入者がほかのだれか 1 人と会話したときに課金される.会員が n 人の場合, 2 人の間の関係は最大いくつできるかな.」

B 「そうですね. n 人のうちの任意の 2 人を結びつける総数ですから, (3) になりますね.この結びつき 1 つにそれぞれ 2 人が関係しているので,その 2 人の会員からそれぞれ b 円を得ることができるとすれば,最大 (5) 円の収益を得ることができますね.」

A 「そうだね.この場合, n が十分に大きいとすると,収益は n (5) 乗に比例するとみることもできるね.コンテンツ販売のような明確な収益は見込みにくいが,ロコミを利用したプロモーションなど潜在的な利用価値は高いといえる.」

B 「なるほど.確かに最近では,テレビのCMよりもネットの口コミの方が宣伝効果は高いとよく言われていますよね.この場合,ある会員が他の会員 1 人とつながることによる会員 1 人あたりの収益を仮に 10 円とすると,会員が 10 万人の場合,最大で約 (6) 円の収益になりますね.最大値とはいえ,すごい収益になりますね.」

A 「最後に,会員同士のグループに注目するサービスを考えてみよう.会員であればだれでも,他の会員を招待して情報を共有できるグループを立ち上げて運営できる仕組みをつくったとしよう.SNSによく見られるコミュニティやグループといったものをイメージしてもらえばよいと思う.あるいはインターネットの掲示板をイメージしてもよいかもしれない.この場合,すべてのグループは会員全員の集合の部分集合ということになる.会員を n 人とすると,その部分集合は全部でいくつできるかな.」

B 「そうですね…いろいろな計算方法がありそうですが, (7) になりますか.最大の価値は,これに基づいたものになりそうですね.」

A 「そうだね.ただ,これまでの 2 つとは違って,グループ自体の大きさにかなりの幅がある.メンバーが数千人のグループもあれば 2 3 人のグループもあるだろう.もちろん空集合も部分集合になるから計算上は 0 人のグループも含まれている.それらを同等に見ることは不適切だから,グループのメンバー数.つまり集合の要素数にグループの価値が比例すると考える.ここでは単純にそれぞれのグループのメンバー数をその価値としよう.つまり, k 人のグループの価値を k 円と考えてみようということだ.」

B 「ちょっと難しいです.もう少し説明していただけますか.」

A 「そうだな…白板を使って説明しようか,わかりやすくするために,会員が全部で 3 人,つまり n =3 の場合で具体的に考えてみようか A 先生が白板に図を書きはじめる).このときグループのメンバー数を i 人として, i=0 1 2 3 のそれぞれの場合を考えてみることにする. i=0 のとき,グループは空集合 1 つのみとなりメンバー数は 0 なので 1 ×0=0 となる. i=1 のとき,グループは 3 つできて,それぞれのメンバー数は 1 なので 3 ×1=3 となる. i=2 のとき,グループは 3 つできて,それぞれのメンバー数は 2 なので 3 ×2=6 となる.最後に i =3 のときは,グループは 1 つできて,そのメンバー数は 3 なので 1 ×3=3 となる.したがって,最大の価値は, 0+3+ 6+3=12 となるね.では,一般式(会員が n 人の場合に n を用いて表した式)を考えてみよう.」

A 先生が白板に書いた説明

n=3 の場合

i=0 のとき, 1( ϕ:空集合)× 0=0

i=1 のとき, 3×1 =3

i=2 のとき, 3×2 =6

i=3 のとき, 1×3 =3

2022年和歌山大前期追試験経済学部【1】2022106410401の図 2022年和歌山大前期追試験経済学部【1】2022106410401の図 2022年和歌山大前期追試験経済学部【1】2022106410401の図

B 「そう説明していただけると,式を立てることは難しくないですね. n i i=0 1 2 n を用いて書くと (8) になりますか.一般式の計算は少し面倒ですが,(しばらく計算して)多分 (9) になると思います.」

A 「その計算で正しいよ.さすが数学が得意だった B さんだね.もちろんこれは,理論上ありうる最大値だけど,会員数 10 万人の場合で具体的に計算してみようか.」

B 「(計算しながら)信じられないくらい莫大な数になりそうですね. 10 の指数を使って表しますね.(しばらく計算して)できました. (10) 円になると思います.」

A 「とんでもない数になったね.天文学的数字どころではない.もちろん,現実には,グループはそのうちのごく一部しかできないだろう.一方,今日では,顧客のコミュニティがいろいろな場面で重要になってきている.顧客のコミュニティでの議論に基づいて新しい製品やサービスが考え出されることもよくある.したがって,グループが価値を生む場面も多いと考えることもできるだろう.

 今日は,個々の会員,会員間の関係,会員同士のグループに注目して,いろいろ計算してみた.この順に値が大きくなる可能性が高いこともわかったと思う.あとは…」

B あとは具体的にどんな仕組みやサービスをつくり出すか.それは私の仕事です.今日は,これまでずっともやもやしていたことがすっきり整理できたような気がします.先生,ありがとうございました.」

問1 次の(1)〜(10)に答えなさい.必要ならば, log10 2=0.301030 tog10 3=0.477121 log10 7= 0.845098 として計算しなさい.

(1)  (1) に入る式を, a n を用いて表しなさい.

(2)  (2) に入る数値を計算しなさい.

(3)  (3) に入る式を, n を用いて表しなさい.

(4)  (4) に入る式を, b n を用いて表しなさい.

(5)  (5) に入る値を整数で表しなさい.

たとえば, n が大きくなるにつれて, 1 n 0 に近づいていきます.したがって, n が十分に大きいとき, 1 n 0 とみなしてかまいません.

(6)  (6) に入る数値を計算しなさい.(5)に基づいて近似値を計算しなさい.

(7)  (7) に入る式を, n を用いて表しなさい.

(8)  (8) に入る式を, n および 記号と i を用いて表しなさい.

(9)  (9) に入る式を, n を用いて表しなさい.

(10)  (10) に入る数値を計算し, r×10 m r 1 以上 10 未満の実数, m は整数)の形で表しなさい.

問2 下線について,あなたが B さんの立場であれば,登録したネット会員に向けて,どのようなサービスを考えますか.そのサービスについて簡潔に説明し,そのサービスの優れているところを,本文から得た知見と関連づけて説明しなさい.必要であれば製品 X がどのようなものか自由に想定してかまいません.また,図を用いて説明してもかまいません.

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